2014年8月24日日曜日

靖国のほとりで

夕暮れ。


帰るまでにあとひと仕事、いやあとふた仕事くらいか?を片づけようと、エレベーターに乗る。まずはコンビニでパンでも買って来ようと、外へ出る。


灼熱の中で、一日中光合成に励んでいた靖国の杜は、その刻(ころ)になるとまるで吐息のように濃い匂いを発散し、かえって日中よりも存在感を増していくかのようだ。

葉裏に潜む闇が一分一秒ごとに濃くなり、しだいに靖国通りは秘密に充ちた気配に覆われていく。


昔あるクライアントに言われた。

広告会社の人たちは皆楽しそうに仕事してますよね、と。


マーケティング部門でプランニングをやっていた頃は、今よりずっと帰りは遅かったが、毎日が楽しくてしかたがなかった。

それから管理部門に移ったが、さすがにこの歳になってくると、楽しいとばかりも言っていられない。

それでも、若い頃に広告の現場で教えられたのは、相手の心にどうやって想いを届け、そこに理解や共感を形づくるかということだ。


どんな仕事をやっていてもそこは変わらない。

そして、誰かに何かを伝えること、相手の心に結像するイメージを想定しながらメッセージをコントロールすることは、永遠にむずかしい。


だから、いつまでもやめられないのだろう。